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行政訴訟

行政訴訟

行政訴訟について

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 日本の憲法第32条は「何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と規定し,日本国民だけでなく外国人に対しても裁判を受ける権利を保障しています。
 入管法に関連する訴訟は,
(1)在留審査関連訴訟
(2)退去強制手続関連訴訟
(3)難民認定手続関連訴訟
の三つに大別することができます。
 在留審査関連訴訟は在留資格の不許可処分等に関連する取消訴訟ですが,在留期間更新不許可処分取消訴訟や,在留資格変更不許可処分取消訴訟もこれに含まれます。最近増えているのは「日本の配偶者等」として在留資格認定申請に対し,法律上は夫婦であるのに,偽装結婚,又は婚姻関係が形骸化して実質的な夫婦関係はないとして不許可処分受けた外国人がこれを不服として提起する取消請求訴訟です。

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 次に退去強制手続関連訴訟は不法入国,不法上陸,不法残留(オーバーステイ),刑罰法令違反等の理由により退去強制令書が発布された場合の退去強制令書発布処分等取消請求訴訟がその典型的な例です。この訴訟の場合に長年日本で生活して来た外国人の方は困るのは,ある日突然退去強制事由に該当するとして収容され,家族とも離れ離れにされて一連の取調べをうけることです。かかる場合には仮放免の申請をしたり,退去強制令書が発布された後にはかかる処分の執行停止を申し立てる必要が出てきます。行政訴訟が係属中でも行政庁の処分の効力は失われず,その手続の続行は妨げないことになっているからです。しかし,かかる執行停止は
①取消請求訴訟が係属していること
②回復困難な障害を避けるための緊急の必要性があること
③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのないこと
④訴訟の本案について理由がないと見える時に当たらないこと
の各要件を満たすことが必要です。このタイプの訴訟で最近増えているのは平成22年7月1日より新らたな退去強制事由として追加された「不法就労助長行為」です。例えば,クラブのホステスが就労ビザなくして(観光ビザ等)で働いていた場合,従前はそのホステスが罰せられるだけでしたが,改正法の下では雇用主も「不法就労」を助長したとして退去強制のため突然収容されることになったので,この類型の訴訟が増えています。

 最後に難民認定手続関連訴訟は,日本が加盟している難民条約と議定書に基づき難民認定申請をした外国人が法務大臣から難民であるとの認定を受けることができなかったときに提起される訴訟です。難民とは,人種,宗教,国籍,特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者とされています。
 難民認定手続とは,外国人がかかる難民の地位に該当するかどうかを審査し決定する手続です。難民不認定処分を受けた場合はかかる処分取消請求訴訟だけでなく入管法違反者として退去強制令書発布処分を受けることもあるので,この場合には前記退去強制令書発布処分取消訴訟も提起せねばならないこともあり得ます。
 このような入管法関連訴訟は最近までは訴訟率が著しく低く「開かずの門」と言われることもありました。しかし,日本国内の外国人に対する態度等により最近では外国人が勝訴する確率が増えつつあります。
 最初から断念せず憲法で保障された「裁判を受ける権利」を行使して行政訴訟を大いに利用するのが望ましいと思われます。